Gallery COMA : Ken ISHIGAKI : 石垣 健




"Screen I" Melamine Resin and Plaster 1991 第55回新制作展  東京都美術館

造形ノート

 轆轤は様々な造形を生んだ.陶芸の轆轤,漆器の木地を作ったり家具制作に使われる木工用轆轤,鍋などをつくる絞り加工も同様の回転による造形である.新しい機械は,いつも新たな造形を生み出し,デザイナーは,その機械の個性を発揮させる喜びがあった.しかし近年の機械は,個性を越え始め,汎用性を持つようになってきた.また,数種の機械を持てば,ひとつの地域であらゆる加工が可能となり,輸送システムは,材料の偏在性も,製品の地域性も踏破した.地場産業が個性を持てなくなったのである.この過大なる自由度のなかで,あらたな地域性と時代性が生まれる.今どこにいるのか?それを考えるのもデザインの楽しみである.消そうとしても消せないのが個性である.この作品は,縦5M横3M高さ0.3Mの加工が可能な,コンピュータ制御による切削機の,健康管理のために作られた.休眠中の機械は,ときどき機械体操を必要とするのだ.これは,機械を産んだものへの,管理者としてのささやかな敬意のしるしである.多くの才能を持って生まれた汎用機が,なんとつまらぬ仕事をさせられていることだろうか.そこには遊びを知らない教育の不快が澱んでいる.


Copyright 2006, COMA CRAFT Inc

ARSNOTE Gallery 2020