コンピュータ
いまやコンピュータは,言語で作動する家電製品です.
力学的な構造が主体の機械のように,
目で見て,その動きが推察できるようなものではありませんので.
これらの電子機器は,解説書を読む以外にそのなんたるかを知るのは困難です.
コンピュータのキーボードは,全面押しボタンだらけですので,(笑)
いささか取っつきにくい電子装置です.
しかし,このキーボードからは,言葉を入力して作動させるのですから,
意外に使い勝手の良い装置とも言えるのです.
新たな指示をすれば,一切のメカニズムに手を触れることなく,
接続された周辺機器をも動かし,
確実に新しい仕事をやってくれるのですから,なかなか便利なものです.
通常,パソコンのようなノイマン型コンピュータは,
プログラムとしてOSや指示書を記憶し,それらに準じた指示を待ちながら実行します.
まさにマニュアル人間の優等生というわけです.
そしてマニュアル文書を差し替えれば,ケロリとして新しい指示に従う,
実に冷静でサッパリとした働き手なのです.
言葉で手順や理論を記憶させれば作動するわけですから,
機械や家電製品でも,内部に小さなコンピュータが使われています.
もちろん,どんな種類の言葉を解釈できるのかは,それぞれ異なります.
私達が普段の生活で,
パーソナル・コンピュータをどのように位置付けていくかは,
なかなか簡単ではありません.
近年では,大事を取って「人間」にたとえて見るほうが,
その協調性も信頼性も判断しやすいと言えるでしょう.
まあこんな比喩は,厳密さを欠き間違えを起こしやすいものですが,
たとえ話として聞き流していただければ幸いです.
昔々,私は,コンピュータに関してこんな説明をしていました.
パソコンという書斎装置の中にはOSという忠実な爺やがいて,
電源を入れると,キーボードやマウスで皆さんの命令を待っています.
命令を下せば,爺やご自慢のCPU(中央演算処理装置)などをつかって演算処理し
指示されたディスプレイ装置に答えを表示したり,
ディスクやプリンターでファイルの保存をしてくれるのです.
OS爺やは頑固でマシン語と限定されたOS用の言語しか理解しませんが,
アプリケーション・ソフトウェアーなどのHow to ものの書物を与えると,
即座に読みこなしながら
その書物に従った指示を受け入れてくれるようになります.
とまあこんな感じで,OSとアプリケーションソフトの存在を学生には納得して貰っていました.
しかし,今では自体はもう少し複雑で,パソコンは謙虚な爺や一人のいる書斎ではなく,
出張社員が常駐したり,社員研修が必要だったり,契約によって仕事の質が変わったりで,
押し売りが来るし,スパイが住み込んだりで,挙げ句の果ては爺やが隅に追いやられ,
定年退職で追いやられる始末.
あわてて新しい爺やと契約するわけですが,
近頃では,爺やと言うよりも何となく派手好きでやり手のOSマネージャといった感じです
もう巷の株式会社と同じような管理意識が必要になってきているのです.
そして,アプリケーションソフトも,同様に人に例えれば,こんな感じなのです.
グラフィック処理で有名なある画像ソフトは,
アイコンという絵文字のようなボタンをもった,数十年続いているソフトです.
ここでは,このようなソフトのことを出張社員と呼んでみましょう.
私のパソコンには,この会社から来て何度も世代交代を重ねた出張社員が数名働いています.
そんなわけで,この取引会社を変更するのは少々おっくうです.
彼らは,独自の言語体系と独特の風習をもち,相互に連携してチームワークが出来ます.
そして,仕事前に本社の仲間と常に連絡をとって事前研修をしているようです.
マウスには敏感かつ従順な彼らですが,耳は小さく直接の命令は受け付けません.
とはいえ
CPUへは,的確なマシン語で微に入り細に入り命令を下せるのですから,
人間の命令が聞けないわけではないのです.
世界中の雇用に応ずるが,社員と会社の権益を守るため,
マウスを通して,マニュアルどおりの命令だけを受け付けるよう,的確に訓練されているわけです.
もともと,この出張社員にとっては,
忙しくてコンピュータ言語なんか理解しようとしない,
売れっ子のデザイナーが顧客でしたから,
商業デザイナーが陥り安い,メーカー順応型の体質が,
自縛的な画一化を業界にもたらしたとも言えるかも知れません.
その代わりと言っては何ですが,そのユニークな繁殖のスピードは,ダントツでした.
写真の修正,写植,版下作業,製版,印刷,果ては製本,配送,配信まで.
あらゆるプロセスを変革し,多くの職種を自動化してしまいました.
人間の仕事が,連携した言語家電システムに統合され奪われてゆく典型です.
この言語家電のチームワークは,OSマネージャーと出張社員達の連携作業というわけです.
そんな恐ろしいほどのパソコン内の協力者があって,
誰もが,一人で完全版下を作れるようになったと
思い込んでしまったというわけです.
これで,コンピュータの中には,
マシン語を駆使する様々な職種の出張社員が常駐しているということが,
「ガッテン!」いただけたでしょうか?
したがって
アプリケーションソフトをインストールしたパソコンは,多数の出張社員が常駐したパソコンで.
文書作成係,表計算係,プレゼン作成チームなど,
貴方の指示を待つ,世界有数のスタッフのいるオフイスだということです.
スタッフは,オーナーの仕事を支え,大切な書類を沢山管理しています.
自分のオフィスをどこかに置き忘れたり,部外者に侵入されたりするようでは,
その管理者の責任が問われるのは当然です.
これで大勢の名簿やバーチャル金庫が一体となると,
警備保障会社との契約が必要となるわけです.
ところで
誰もが優秀なスタッフをもてるようになったのですから.
誰もがスタッフを育てる気品を身につけなければいけないとも言えるのです.
出張社員を使って仕事をする場合,オーナーはプロフェッショナルと言えるでしょうか?
やはりディレッタンティズムとは,メチエの回避です.
オーナーのユニークなディレクションが問われるのは必至です.
プロは果てしない遠回りを厭わぬ者です.
オーナー自らがコンピュータ言語を使い,
出張社員に頼らずともマシンを駆使できるに超したことはありません.
むしろ,自ら出張社員を育てるぐらいの度量がないと,
社員を送り込んでいる会社の言いなりとも言えるのです.
コンピュータを駆使ししているなどとは言い難いわけです.
コンピュータを使うと,コンピュータ・アートと誰もが言いますが,
現実にはそれはなかなか敷居の高いものであることがお解りいただけるでしょうか?
OS付きのコンピュータに,まだプログラムというソフトが皆無だった時代は,
誰もがプログラマーでした.
シャワーやガス風呂が未だなかった頃,
子供達は,火をおこし風呂を炊くのが特異でした.
少しでもプログラムを書くチャンスが,
誰にも再来することを願うばかりです….
07.08.30
isi
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