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● 雲上  1976




Street Furniture  "雲上"   pottery   1976  Photo by Kazuo TAIRA
第40回新制作展   東京都美術館





"雲上"   pottery   1976

 

アルス ノート (造形ノート)

雲上   1976

 雲を土で.... 信楽にて。

 数種の部分型で多種のユニットを成形し、更に多様な構成へと展開.

イメージ
 雲のように自在に変化し,集合,離散できるスツール群.

 耐候性のある陶器でガーデン ファーニチャーをデザインした.スツールとして個別にも使え,寄せて設置すれば大きなフォルムを構築できるような活力のある立体的ユニットの形を目論んでいる.

 陶器の耐候性は素晴らしい.35年たった今も,雪の少ない東京ではあるが,全く釉飛びもなく,もちろん退色もない.その時にいただいたカワイイ狸君も健在だ.

構成
 まだ「造形譜」などと言う発想もないころの作品だが, 形典の視点から見れば,先ず,形譜の形式は,自在な拡張ができるユニット形式と言える.

 構成全体の場には,寸法のモデュールとして等間隔のグリッドとなる12cmの立方格子が想定され,ユニット化した36cm四方の陶器のブロックを自由に配置できるようなシステムのデザインである.

 各ユニットブロックは3等分割された12cmをモデュールとしたえぐるような欠き込みから形作られている.

雲上形譜renda 座標譜の簡易レンダリングによる可視化

 この時作成したユニットブロックの種類は,9種(A~G)となり,組合せによって流れを変化できるようなかたちになっている.各ユニットブロック自体も,雌型の要素9種(直外,直中,弧大外,弧大内,弧小外,弧小内,弧変外,弧変内,天盤中)で構成し,ブロック間の面をつながりやすくした.

雲上            
B A C     B
A G D E F  
C          
           

上方のモノクロの写真では,左手前から,C-A-B-A-C-D-E-F-B とつながり,これらに囲まれて一段低い高さでコバルトの一色掛けナマコ釉のGがある.それぞれの雌型の組み合わせは,

A(直外), B(弧大外,弧大内),C(弧変外,弧変内),D(弧小外,弧小内),E(直中,直中),F(弧小外,弧小外),G(天盤中)

となっている.要素の雌型を数種の組合せにすることで,作品全体のリズム感が強調される.

 陶器の型物の制作の場合は,造形譜を,具体的な石膏型として実制作者に渡したことになる.もちろん今なら,この座標譜をデジタルデータ化して保存し,型制作を含めて実制作者に手渡すことも可能だ.型制作が別人なら,ここても形譜の解釈が成される.工芸の世界では,分業によって生まれるそれぞれの職人の解釈がみごとな調和を生み出してきた.曖昧なスケッチや言葉が生きたイメージを生み出していく.

UnjoZKeifu

 今なら,こんなスケッチ代わりの座標譜で,たたらを張り込む型の内側の様子も検討できる.
焼成による収縮を考慮して1.14倍で成形型を作成した.

 もちろん,石膏型の状態でも,型取りから焼成までには,土の選択から,エッジの処理,表面の仕上がり,釉掛け,焼成などがあり,形譜の解釈によって表現をどのようにでも変えられる.

構法: 石膏型を使って型取りをする陶器の作品.雌型となる四角い立方体の型枠の中に,更に,モデュール化した雌型の要素をセットし,たたら(粘土の板)を張り込んで一体化して成型する.

 構造は,建築的に言えば壁構造だ.構築材料の陶土の厚みは12㎜ある.初めはたたらがちぎれてしまい,手で型まで運ぶこともできなかった.耐火度をあげる生の土のちぎれやすい構造,乾燥収縮に耐える構造,これに加えて,1300℃を越える本焼きで,自重に耐える構造が要求される.ユニットの適所に梁の役目と膜構造を融合させた構造が必要だ.さすがに大きな狸が作れるだけあって,信楽周辺には耐火度の高い土があった.だが重くなれば角物のゆがみはすぐに出る.さらに難しかったのは,脱型と乾燥だ.これは岸上寅吉氏に大変お世話になった.長い経験により,その土地の風や土の肌を時々刻々察知できねば,とてもできる仕事ではない.しっかりと素焼きになってからも,濡れた刷毛のひと撫でで,見えなかった割れ目が現れる.そうなったら本焼きはできない.これらの困難がフィードバックされ,はじめてよいデザインが生まれていくことになる.山のような宿題が残り,今思い出せば,実に良い体験だった.間瀬氏に感謝!

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COMA DESIGN STUDIO  Ken ISHIGAKI

 

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