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    NPO ISTA 会員として,サイエンスアゴラ2008に参加し,ワークショップを開催しました.
  大変報告が遅れました.企画にご参加いただいた方々,並びにに主催された方々に感謝いたします.
 ワークショップに参加された方へ:スライド内容の訂正とお詫び.
ワークショップの内容と報告

ワークショップ 「美しいって何だろう?」 No.01
のページです.

その1:

画面構成の分析 スライド(15分)
サンプル資料の分析(20分)

その2: プロポーションの仕組み方 スライド(15分)
実験:マジックタイル(プロポーション√2)による構成実験 (20分)
質疑応答(20分)
配布資料(1)

浮世絵のコピー(画面構成の分析)
葛飾北斎 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
(A5プリント)
参考サイト:東京国立博物館 名品ギャラリー
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/
Con?processId=00&Title=%90_%93%DE%90%EC%89%AB%98Q%97%A0&Artist
=&Site=&Period=&FromNo=&ToNo=&pageId=F07&filmnum=34988

配付資料(2) マジックタイル?・√2矩形(画面構成の実験)
(A5プリント)
配付資料(3) レイアウト用台紙 (A5枠付き)
(A4プリント)

 


ワークショップ「美しいって何だろう?」  その1

1-1:画面構成の分析(スライドショウによる解説)
 実は,ちょっと難しい課題のワークショップでした.ワークショップは簡単で解りやすいものが一般的です.しかし,私たちの命を扱う芸術も科学も,そんなに簡単なわけがありません.実は,人間とはまだまだ解らないことだらけで,その難問にチャレンジするのは,簡単なのだということです.すぐ結果のでないことでも,大切と思ったら躊躇せず,着実に自分を見つめて問いかける方法に気が付けば,いくらでも自問自答の日々がつづきます.そのことに真正面から問いかけられるのは,自分を置いて他にありません.ただ一度の人生において,科学を理解できるのはかけがえのない自分自身の論理的思考の確かさであり,芸術を感じ取るのも自ら研鑽した己の感性に委ねるほかありません.その探求をどこまでも導いてくれる道しるべこそ,よりどころとできる科学的客観性であり,芸術のもつ美しさなのでしょう.

 

1-2:サンプル資料の分析

  冨士を望む日常を,見事に写しだす浮世絵.不二という消点(北斎からの視線)は,命の周期をも超え,私たちの心にもおよびます. 

 

 自問自答を助けるのは,いつになっても諦めることのない,のんびりと穏やかな心もちです.そしてそれを手助けしてくれるのが,まさに一心同体の目や手の力です.目で見たことを即座に表し再確認させる手.忘れた頃にはっと気付く,心の不思議な持続性.人間ってスゴイ生き物ですね.「考え方が身に付く」とは,とても唯脳的仕業とは思えません.

 

無意識に感じ取っているパターンをあえて描き出し,あらためて美を支えている基本的構成を確認していきましょう.

 ここでは,写真自体の説明はあえて求めません.言葉にせずに,目で見て,描いて,眼の躍動や手の筋肉の感覚も加えて考えてください.線のバランスは,それを描いた手が知っているはずです.その結果が,参加した方々の発見された右列に連なる写真情報ということです.文字データ,ピクセルデータ,ベクトルデータ.この明解な差異の意味することが,私たちの認識にも役立ちます.

 新しい科学は,定量化を超えた構造化で始まるかも知れません?じつは,すでに社会科学が…なんて考えずに(笑),先ずこの方のように手を動かしましょう.描くことで,手はその線の長さも,曲線の具合も,分散した位置も筋肉の余韻として感じ取ってしまいます.「○○山に登った.」と言う人は,全身でその山をトレースした情報jをもっているのです.もちろん説明とは,共通の認識からの組み替え…というより,ここでは余談です.(笑)

無意識の中の幾何学的な把握.意識したとたんに,どうしてもそれが気になってしまいます.しかし,そんなことを中心に絵を見るわけではありません.でも気が付いてないのではなく,意識しなくとも当たり前のように自然に認知しながらも,そのことに目を奪われることもありません.無意識な知覚が,意識以上に対象を素早く感知し,冷静に抑制を効かして更なるパターンを探り出すよう,意識にゆとりを持たせようとします.実に自然体での認識力は不思議です.恐らく生きるための危機管理力とは,このように惑わされることのない深い洞察力を指しているのでしょう.眼前の対象にたいする総合的な判断とは,平和時には,美の鑑賞でおおいに養えるものではないでしょうか.戦いとは,破壊ではなく,自然と競う創造であるはずです.

 

お詫びと訂正
ワークショップのスライドショーで,波の上昇と下降を間違って記述していました.物理的には,波の頂点直後が下降(もう下がり始めている)部分,谷直後の部分が上昇(正にこれから盛り上がる)部分となります.ここにお詫びし,訂正させていただきます.Back

 
過去を思うか,未来を思うか?いま現在をクールに見る必要がありました.隆起した山の頂点の姿は,さてどちらの状態でしょう?いやはや,世界経済もこの絵のごとく.サーファーならこの恐慌の荒波も危機どころか喜々として滑り降りるのでしょうか?自然は,大なり小なり周期をもつようです.となると海から見る不二の不動点も永久とは言えません.関東ローム上の都市から見ると,それはある日のベスビオ火山かもしれません….まさかそんなことは思いもしない神奈川沖浪裏の図ですが,さればこそ凪いだ水面のグラデーションや遠くたおやかな稜線をもつ火の山が,なんともありがたい三十六景なのです.Back

 

同じ大きさを繰り返すと,ちょっとした形や向きの違いが目立ってきます.1:1や1:2の対比が明解な対比とリズムを生み出します.大きさが違っても,同じ形で同じ向きなら,簡単に眼で対比ができ,比例も明解です.又,無意識に眼は,それらの対比をリズムのように感じ取っているようです.それらの現象には,まだ名前も,分類大系もないようです.(つまり今までの科学的視点が及ばない,統合的で複雑な認識です.)ただし雰囲気としては,意外に抽象的(柔軟かつ明確)に脳や心に記憶されているようです.

 

 描いて考える.画家はこれを生涯続けます.版画は,そうして生まれてきた原画をもとに,彫り師や刷り師の手が加わります.その過程において,個人ではなしえない仕組みが,編み出されているのです.版による刷り分けは,版画の面白さをいっそう引き立てます.筆を重ねるごとくに,たった数枚の版で,作品を刷り上げようと言うのですから,嫌がおうにも冷静な分版と刷りの技が生まれます.Back

 
ワークショップ「美しいって何だろう?」  その2
2-1:プロポーションの仕組み方
 

マジックタイル を使った構成の比較

 スライドショーで,1:1から1:3までの数種の比例を比較観察してみました.
1:1から1:3までの間 の知名度の高いプロポーションを使い,コンピュータによる平面構成をスライド シ ョーで提示しています.構成のプロセスと結果を比較鑑賞することで,どのプ ロポーションがどのような雰囲気を生むかを実際に知って貰うためです.それは, 黄金比だけがコンポジションの善し悪しを左右するプロポーションではないことを,ハッキリと自身の目で知って貰うためなのです.従って,一回限りの今回 のワークショップでは,あえて演習に√2矩形を使いました.黄金比は美しいと 信じ切っているらしいので,他の比例でも美しくする方法があることを実感して 貰う為です.1:√2は,1:2と密接な関係がありますね.したがって,1:2のプロポーションも混在してきます.

 比例が揃っていると,なんとなく統一感が感じられることが実感できたでしょうか?スライドで紹介した黄金比のマジックタイルでも,是非画面構成に挑戦してください.

 感じ取る楽しさと感じ取れる空しさ,論理的確かさと論理的味気なさ.この矛盾した関係の狭間こそ,芸術を育む空間です.


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いろいろな黄金比の生まれ方について,科学的に解説しているサイトを紹介させていただきます.
岐阜県教育委員会教育研修課 作成による下記ページです.
http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/museum/golden/page62.html アニメ^ションを使った親切で解りやすい説明です.客観的視点を失うことなく美を解くことの難しさ.科学的精神の秘めた熱意が感じとれ,黄金比崇拝に陥ることなく,視野の広がる解説です.

 

2-2:実験:マジックタイル(プロポーション√2)による構成実験

実験は,意図的な結果を求めるよりも,偶然だけでなく主観的情況をも客観的に把握し,観察する面白さがあります.
黄金比でなくても,√2矩形を使って,どなたも,短い実験時間の中で,素敵なコンポジションを制作していました.下方にその一部を紹介させていただきます.

 省資源(実は資金難/笑)と皆さんのメモ替わりと思っての撮影でした.手持ちの撮影のため,影もあったりといたらぬところだらけで恐縮です.

 以下は,構成のためのラフスケッチとお考えいただき,画像の質はどうかご容赦下さい.
構成要素を限定することで,その差異と共通点を探っていきましょう.

MagicTilesR2
   

2:1の比例を生かした構成
 
   
   
   
√2の対角の傾きを生かした構成
 
   
   
   
   
相互に傾きが一定な構成
 
 
独自の傾きと位置を調和させた構成
 

 
皆さん 最後まで熱心にご参加いただきました.
今後も,このようなWSを試みたいと思っております.
どうぞ率直なご感想をお聞かせ下さい.

Arsnote Lab.    石垣 健


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