Arsnote Exhibition 2016
■■アルスノート展 -形を奏でる記譜のすすめ- (その2)
日時:2016年9月23日 ~ 10月31日(月)までです.終了
arnoGall
要予約:満席や休日などの閉店日がございます.お電話にてご確認の上,ご予約ください.
場所:ドイツレストラン ツム・アインホルン Zum Einhorn
の店舗内がアートフォーラムの会場です.
このフォーラムの名は,かつて,赤坂のドイツ文化会館(OAG)にあった頃から野田シェフが続けておられる店内展示です.
■展示概要(開催記録・写真はこちら)
●展示作品は,主に“造形譜”(*formical score)からの実制作(performance)で,建築のファサードのような提案もあります. |
今回のフォーラムでは,使用した“造形譜”を基にカッティングプロッターで加工した“折り型紙”を実費にてお譲りしています.
*Formical Score: Paper relief-21g.ai (c) Ken ISHIGAKI |
●造形譜とは ▶造形譜などの疑問な点を気軽に話し合える月例懇話会を10月から開きます.詳細はこちら |
●造形譜の公開(release) もし著名な造形物の“造形譜”が公開されれば,複製ではなく,真似や模写とも言われずに好きな絵画を描いたり,ダビデ像や百済観音像を彫ることに挑戦できるわけです.素材を厳選し,かつての仏師以上の腕前を振るう実制作家(performer)が,登場するかもしれません.造形物は,音のようにすぐ消えてしまうこともなく,実制作を急ぐ必要もありません.やり直しができる素材もあります.生業とするのでなければ,生涯のんびりと作り続けることも可能です.建築ならば,構造や雨仕舞いを先ずしっかりと施工し,造形譜の解釈を議論しながら,内部の造作や家具を作り上げることも可能です.石造りの建物は,この典型です. さて難題となるのは現役作家の姿勢です.造形譜を公開せず,自作自演を旨とし,独自の創作性を守りたい作品もあるでしょう.造形譜を公開し,秀逸な解釈と表現力を広く求めるような作風もあるはずです.作品の様々な享受の仕方があってこそ,芸術は活性化するものです.大量生産と一点主義だけで民主主義の文化が終わるとは思えません.「幸せは分け合うと増えるもの…」と言われます.“物”でない“事”を分かち合い,誰もが作る楽しみを取り戻すには,楽譜やレシピ―同様に造形譜と実制作への評価が必要なのです. |
Facade 16091 |
●造形譜の抽象性(捨象性)について
料理には,レシピーといった簡潔な抽象表現があります.もちろん開示されるレシピーは,楽譜同様に実に曖昧な表現であり,それで一流シェフと同じ料・理ができあがるとは思いません.とはいえ暗中模索の状態からは,かなり抜け出せます.実際に食し,その可能性を知るからこそ,このような抽象表現が再現の為に求められるのでしょう.
造形表現には,建築,彫刻,絵画,素描,図面,3Dデータなど様々な形式とその表現方法があります.そしてその習得方法は,見よう見まねの学習から,専門知識の活用,解説困難な技能や才能による創造的洞察まで様々です.
造形表現は,その場で消える楽音,食べ頃に食されていく料理とは異なり,いつまでも持続する表現です.それ故に,残念ながらレシピや楽譜のような客観的記述による再現性に価値を認める慣習がありません.また楽典のような文法的ルール(造形では“形典”)なども教科書的には定立されていないようです.
しかし,幸か不幸か前世紀からの爆発的なICTの進歩と普及は,“視覚情報”の科学的基盤を構築しました.視覚情報システムは,写真の発明を遙かにしのぐ情報通信革命へと発展を遂げ,様々な素材を彫刻し塑像する3D-加工が可能となっています.つまり,見える情報から触れられる情報へと置き換わってきたのです.
このあまりにも急激な変革が社会的に受け入れられるまでに,技術革新も含め1世紀近い年月を必要としました.35億年余の地球型進化の渦中にあることを思えば,人間の創造力など微々たるものです.しかし渦中の私たちにとっては,生涯の内での価値観の急変に慎重にならざるを得ないのです.迫り来るAIの増殖.これはかなり深刻な難題です.
そんな大変革の最中に互換性のある表現となってきたのが,普及してきた3Dデータ(3DS,DXF,GTS,OBJ,STL等)です.まだ聞き慣れない方もいるでしょうが,2Dデータ(PDF,BMP,JPG,PNG等) を日々見ているように,いつの間にか誰もが3Dデータを扱うことになるでしょう.つまり,平面だけでなく立体物も,デバイス機器が概略のかたちを出力し,コミュニケーションを円滑化し,生活をも支えるようになるというわけです.もうお気づきとは思いますが “造形譜”を表すにも,この万能な3D-データが打って付けなのです.しかし,これらのデータを巡り,著作権(造形作家側)と著作隣接権(実制作者側)等の判別の必要性が生じています.そこで無視できないのが記譜という著作物の概念なのです.つまり,“造形譜”という概念の社会的な認知と的確な位置付けが必要なのです.
それにしても,料理という表現は贅沢です.
どんなに美味しくとも残さずに食べてしまうのですから.
石 垣 健 (造形作家)
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■アルスノート (作品の制作プロセス)
カッティングプロッターも小型のものはずいぶん安価になってきている.また,ファブラボのような業態も増えているようだが,まだ立体的な作例は乏しいようだ.3D-プリンターに押され気味で,せっかくの持ち味も生かされずにいる.紙という素材は手軽であるから教材としては扱いやすい.また,平面素材を切る技術や設備は,レーザー切断機やウォータージェット切断などの工業化が進んでいる.つまり,紙で機械加工できれば大型の素材でも機械加工できる可能性がある.
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