更新:
12/04/28
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シンメトリーと動的バランス この地上において形の秩序と無秩序をおおよそ見分けるには,同じ形の存在,つまりシンメトリーに注目するとよい.細波や鱗雲のような並進対称,雪の結晶や花のような回転対称,動物に見る左右対称などは,内在する秩序と外界との関係の表れだからだ.なんとも複雑な秩序をもつ生物も,重力の影響を受けにくい液体中に生じ,ほぼ球対称から外見が変化していく.重力によって上下を創るもの.螺旋に分裂して堅固な殻を形成するもの,動的に上下左右の対称性を保ちながら前後の差異を形成するもの,陸上に上がり,重力に打ち勝って静かに螺旋的分岐で繁茂するもの,左右の対称性を保ちながら疾走し,明確な前後と上下を形成するものなどが,抽象的パターンとして見出される. しかし,シンメトリーをもつどのような動物であれ,足やヒレを完全に左右対称に動かすことはまれだ.重心移動により対称性を自ら破らなければ,前進もままならないのであるから,対称性は一対の動的非対称から対象性を周期的に生み出す構造をもつわけだ.これは正に波動的前進である.面白いことに造形表現において,静的な図解や極端な象徴性を除けば,生物の輪郭を左右対称に描くことはまれである.通常は斜めから描き,顔を正面に向ける場合でも体のポーズを非対称にとる,あからさまなシンメトリーの構図を避けているわけだ.それではなぜ形を考えるときシンメトリーが重要に思えるのだろうか?それは脳の視覚認識において,明確なシンメトリーの概念モデルとの照合が成されているからであろう.どのようなポーズをとっても,脳内ではその状態の対応関係が,はっきりと左右対称の形を基準にバランスの程合いを把握のできるのである.そう考えると,地上の動物の前後や上下の差異はシンメトリーの乱れと言えるだろうか?運動中の対称性が崩れれば前のめりや尻餅をついて転倒するはずだ.ならば,ここにもモビールの腕ように力学的モーメントを保つ大地との絶妙な動的対称性が働いているはずである.周期性を伴った運動感覚も,シンメトリーの移行的変異=リズムと考えれば,ますます形のシンメトリーとリズムは,切っても切れぬ深い関係にあることが推察されるであろう. 図 8:現実の対象と整理されたイメージ.配列モデュールによる概念的操作がデザイン的創造性へと導く. 上の図のように,現実がどんなに雑然としていても,脳内では,整理されたイメージに整え,更に対応する配列的抽象概念によって各要因を多次元的に抽象化することが可能である.この抽象としての配列モデュールは,表計算ソフトのように,配列要素ごとに現実の対象に対応するためのデータ・アドレス(添字)を定めることで表現できる.オブジェクト・データ,色データ,質感データなどの配列モデュール,およびリズム,シンメトリー,プロポーションのモデュールが格納され,さらに,空間構成のための移行,回転,拡縮データなどが含まれることになる.オブジェクト・データは,関数で表記しても良い.この配列モデュールの計算結果を更にベクトル変換することもでき,離散と連続を組合わせた様々な造形構成ができるわけだ.もちろんこれはコンピュータプログラム上での説明である.日常の認識の中では,数値化など飛び越えて頭の中のイメージでこれを操作しているはずである.したがって,いきなり手なりのスケッチが描かれてしまうのだ.認識の形の秘密を探るには,この無意識に処理される抽象的概念操作を意識することが必要なのだ.
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