アルスノノート
ZONE I 1987
登った梯子をはずすべく、、、
記念のはしごをのこす。
リズムとプロポーションの構成をアルゴリズム化してデザインした作品.定量・定性化した造形デザインを可視化によって確認するには,嘘や誤魔化しのできない計算機がうってつけである.だがこの時代のパソコンは,見栄えのするレンダリングなどできなかったので,実物を造らざるを得なかった.当時,「この空間の把握力が、プログラム化されているのは鑑賞者のほうである。とすると、この造形プロセスのプログラム化は何を意味しているのか。それは、もちろん the next step である。」と書いたが,いまなら「…それは,『形典』への階梯である.」と書くほうが解り安いだろう.
イメージ
ミニマリズム的作品と思われる方もいるだろう.確かにそうだが,そのきっかけは期待に反するかもしれない.己の空間感覚を試してみたかった.いわゆる創作性などというかっこ良い話しではない.論理性の上に構築されたイメージを具現化することで,己の眼がその空間性を把握できるのかという実験である.幸いにして賞もいただき,実験結果は客観性を得た,もちろん,この判断は観る側の空間的センスにあるのだ.人のイメージ力とはすごいものである.そしてもう一つ,数理の秘密?を知ることになる.これは正に「秘すれば花」であろう.
人は何を基準に対象を位置付けるのだろうか?差異を見出すには,変化自体を基準にすることも可能なのだ.造形構成における基本的記述とは,人間においてはどの程度の次元が必要なのか?そんな疑問がミニマムな作品を生むきっかけだった.無精者にはもってこいの手法…と言ったら怒られるであろう.
構成と構法
アルゴリズムはプログラムに記述されていて,構成は隠しようもない.寸法のモデュールは、引き続き「フラクタル スケール」を使用している.
構法には,その思わぬ恩恵があった.部材の寸法や交わる角度が正確に出ているからだ.もちろん,製作現場は,そう旨くはいかない.仕口をNC加工するほどの資金的ゆとりはないからだ.それでも,正確な寸法が解っているので,スタッフに作業での迷いはなかった.