●FRACTAL SCALE & GRID 2020. 8
長年使用してきたフィボナッチ数列を基準とする自己相似モデュール (Self-similar Module) の物差しを「フラクタルスケール」と名付けました.面状や立体の格子は、「フラクタル グリッド」とか「フラクタル ラティス」と呼ぶことにします.下方に詳細解説↓2020.8
上記の「フラクタルスケール」は、フィボナッチ数列を折り返すように埋め込んだものです.このスケールは、全体を1として,それを144に分割し,1/144を1ポイントとして表しています.
通常の度量衡は、無限に測れることを想定しているわけですが、この造形デザインのためのスケールは、想定するイメージ全体を含む領域を1と考え、それを解りやすく n 等分割し、1/n を1ポイントとして測っていく物差しなのです.つまり、1である全体を144ポイントで表すのですから、縮尺は自由にさだめることができるのです.
解りやすく言えば,コンピュータディスプレーに想定するイメージが写っているような感じです.1ポイントが1ドットと考えれば,ずいぶん荒い画面ですが,大まかなプロポーションを見定めるには,これで十分です.もちろん,ディテールが決まれば,一ポイントを更に分割してもよいわけで,1440ドット四方となればかなりイメージも定まり,おおよその顔認識ぐらいできそうです.
通常の度量衡の物理単位は,その時代に絶対的と確信できた単位原器を基準に,測定するわけですが,イメージの為のスケールは,全体を仮定し,それを認識しやすいように分割し,全体対部分や部分対部分の関係を表せるような最小単位を仮定して共通の単位に定めるといった感じで,ゴムのように柔軟なものさしということになります.
上図のフラクタルスケールを,n=144に分割する利点は、
1)黄金比に近似となる整数比がフィボナッチ数列で指定でき,必要以上に正確な無理数から解放される.
2)144 = 2×2×2×2×3×3 なので、必要なら2で4回、3で2回の等分割ができる.
等です.
更に実用的な具体例を述べれば、
3)1ポイント=1cm とすると、144cm がおよその顔の高さ.
4)110cmで手すりの高さ.
5)89cmで3尺をちょっと欠く.
6)55cmで低めのテーブル.
7)34cmでスツール程度の高さ.
8)144+34=178cmで6尺弱となり、一畳(定尺のベニア板)から無駄なく板取できる建築的なモデュール寸法.
などの関連したプロポーションが定められます.
ようするに.1ポイントに対してふさわしい実寸(物理量)を対応させれば、分子設計から都市計画まで、それぞれに見合った比例的構成を概略的に把握できるというわけです.
世の中のIT化が進む中で,ディスプレー上の図像は,自由に変形できることを誰もが知りました.と同時に実寸指定のプリント出力に少々苦労するようにもなりました.プログラマーは,ディスプレー上のウィンドの位置と大きさ,そして同時に起動している複数のプログラム,複数のディスプレーなど,それぞれの座標系に合わせた画像表示を行う為のスケーリングに大変苦労してきました.ディスプレー上のドット(画素)は,ここで言うポイントと同じで,画素が細かければ微細な形に,荒ければおおまかなフォルムやプロポーションに目が向くようになるわけです.
スケール(scale)の意味には、規模、段階、目盛り、縮尺、比率などが含まれ、音楽では音程でなく音階、数学では記数法、n進法など十進法に限らず使われます.これらの意味から度量衡のような物理量だけではなく、認識における分割、リズム、プロポーション、ハーモニー、フォルムなどの概念的把握を担う(音楽の五線譜のような)スケールとして、新しい解釈が生まれ、常識となっていくことを期待しています。2020/08/31 isi
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